My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
知らない声は、レベル2とか言ってた。
……まさか。
「この目が6秒間見つめたものは、肉が硬化し生きたまま人形になる」
巻き付いた黒い布紐がオレの体の自由を奪う。
まるで生きた蛇みたいに強く体を縛られて、宙に持ち上げられた。
そこから見えたもの。
院長先生と同じように、体を硬い甲羅のようなものに変えて床に崩れ落ちるパメラ。
そしてそのパメラのすぐ後ろに立っている…変な生き物。
ひょろりと細長い体。
二つの人のような足は見えるのに、両腕は見当たらない。
手がない代わりに伸びてうねうねと宙に浮かぶ黒い布っきれが、オレの体にも巻き付いていた。
そして分厚い唇を象ったトンガリ帽子に、その下にある顔は…顔、と言っていいのか。
そこには、巨大な目玉が一つだけ。
まるで怪盗Gの仮面みたいに、でもそこには本物の目玉が一つ、ギョロギョロと左右に動き回っていた。
その巨大な目玉の中には、レベル4や白髪のあんちゃんと同じ星マーク模様。
なんだこの不気味な生き物…まるで人形のような、ピエロのような、変ちくりんな姿。
なのに寒気がする。
こいつがレベル2とか言ってたんだ。
…もしかしてこいつも、あのレベル4って奴と同じ…AKUMA?
「肉が硬まっては動けない。硬いものは弾力性がなくて脆い」
淡々と告げる声は、そのトンガリ帽子の巨大な唇から聞こえてきた。
よく見れば、飾りのようなふざけた分厚い唇なのに、話すように動いてる。
まさかこれがこいつの口?
「さて問題です。こうして軽く押すだけでどうなるでしょう?」
誰に問いかけてんのか。クイズのように問題を出しながら、その不気味な生き物が片足を上げる。
踏み付けるように乗せたのは──…人形のように硬まって動かない、パメラの顔の上。
メキ、と嫌な音がした。
「やめて! やぁあ"あ"あ"! 痛い痛いッ! やめてぇええ!!!」
メキ、メキ、メキ
ピシ、ピシ、ビシ
ミリ、ミリ、バリッ
まるで硬い甲羅を踏み潰して砕くような音。
耳を塞ぎたくなるようなパメラの悲鳴と重なって、踏み付けられた顔にヒビがミリミリと入っていく。
信じられない光景だった。