My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
──ダンッ!
「きゃあぁああ!」
心臓が宙に浮く嫌な感覚と、エミリアの悲鳴。
でもそれは一瞬で、気付けばホクロのあんちゃんに担がれたままオレとエミリアは地下通路の廊下まで一気に階段を飛び下りていた。
「とっととっ飛びすぎ…!」
「吃驚したぁ…!」
あんちゃんの腕から解放されて、思わずヘナヘナとその場に座り込む。
一気に長い階段を飛び下りるなんて…このあんちゃん、黒尽くめのエクソシストってのとは違うみたいだけど、充分強い体持ってそーな気がする。
「院長先生?」
その時、不思議そうに通路の奥を見るエミリアの声を耳にした。
つられて目を向ける。
見えたのは、地下室に続く暗く細長い通路。
その暗闇の奥に、チビ達を抱いた院長先生の後ろ姿が見えた。
「何してるんです! 早く地下へ…!」
鋭い声を飛ばすホクロのあんちゃんに、何故か全く動こうとしない院長先生の後ろ姿。
…院長先生?
「…め……よ…」
めき、となにかが軋むような音がした。
「キ…て、は…だメ…よ…」
めき、めき、めき。
無理矢理に関節を捻じ曲げてるような、そんな嫌な音。
その音はゆっくりと振り返った院長先生の体から、聞こえたような気がした。
「院長先生…!?」
振り返った先生の顔が、硬くてツルツルした甲羅のようなものに変わっていく。
いつもはふっくらとしていた優しそうな唇が、硬く半開きのものに変わって。
いつもは温かい色をした優しそうな目が、焦点の合っていないガラス細工のようなものに変わって。
「先生…!」
カシャン、と音を立てて崩れ落ちる院長先生の体。
見ればその床には、院長先生だけじゃなくチビ達全員の体も転がっていた。
皆両目があらぬ方向に向いていて、まるで陶器か何かで出来た人形のような姿。
…え…なんだ。
なにが、起こってるんだ…?
「ぃ…いんちょ…せんせ…?」
恐る恐る近付く。
暗くて細長い通路の奥。
床に崩れて倒れている、院長先生とチビ達。
その姿は…ガラス細工のような目で、だらりと半開きの口を開けた…まるで──
「人形…みたいに、なってる…?」
なんだよ、これ。