My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
笑い声は、知らない声だった。
「のろいのひだりめはききませんよ」
孤児院のチビ達のような、少し舌ったらずな喋り方。
でも変に丁寧な喋り方で、チビ達とは似ているようで全然似ていない。
そんな変な声がした方へ目を向ければ。
「われわれがいつまでもおくれをとるわけないでしょう」
そこにいたのは……なんとも言えない、変な生き物だった。
全身真っ白な体。
大きさはオレとあんま変わらない。
頭とお腹に、白髪のあんちゃんの顔にある星マークみたいな模様を付けている。
頭には光り輝く大きな輪っかみたいなもんを二つ浮かばせていて、背中からも光り輝く真っ白な翼が二つ伸びている。
……なんだあれ。
まるで…
「あれは天使…?」
オレが想像していたものと同じ名前を呟いたのは、院長先生だった。
ほぼ半分と言っていい程、崩れてしまっている部屋の壁や天井。
そのあちこちから煙が上がっているのは、今さっきの爆発音で壊されたから?
その衝撃はオレ達のいた所まで及んでいたみたいで、すぐ側の足場まで崩れかかっていた。
でもどこも痛くない。
爆発音も耳にしたけど、衝撃なんて襲ってこなかった。
もしかして…この白髪のあんちゃんが覆ってくれたマントで、守ってくれたのかな。
………こんな薄っぺらなマントで?
やっぱりこいつら、ただの人間じゃない気がする。
「てんしではない」
院長先生の言葉を否定しながら、真っ白い変な生き物が笑う。
人のような形の手から、パチパチと上がる変な青白い光。
なんだ、あれ……もしかしてこの部屋を壊したのは、あいつ?
何がなんだかわからないまま、疑問ばかりが浮かぶ。
「え~ん…えぇえ~ん…」
その時大きく崩壊して抉れた壁の向こうから、小さな泣き声が聞こえた。