My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「大体それはこっちの台詞だ。ガキだったら何しても許されるのかよ」
大まかなことは話した。
俺達のことや怪盗Gを追っていること。
…しかしまさか本当にGがこんな子供だったとは。
そのガキの所為で雪は野郎共の独房にぶち込まれてんだ。
それを思えばガキ相手だろうが1mmだって譲る気はない。
子供なら何しても許されるなんて思うなよ。
周りが許しても俺は許さねぇからな。
「だからってあんな…!」
「エミリア、貴女だってこの方の連れの額を割ったんだからお互い様でしょ。もうやめなさい」
「う…す、すみません…」
隣で静かに宥めてくる院長に、途端に女の威勢が縮む。
まるで鶴の一声だな。
どうやらこの院長ってのは立場だけじゃなく、人望もあるらしい。
「…?」
その時、首筋にちりっと微かな違和感を感じた。
これは視線だ。
それも好意的ではないもの。
辿るように目を向ければ、応接室のドアの側に立つ一人のシスターが見えた。
少しふくよかな体の中年女。
じっとこっちを見る目は、"黒の教団"という知らないものを見るような目とはまた違う。
…なんだあの目。
なんとなく居心地の悪さを感じて睨み返せば、女は静かにドアの向こうへと消えていった。
「院長。ティモシー君の額の玉についてはご存知ですか」
「ええ」
あの中年女の視線に気付いていなかったのか。話を進めるマリに、俺も仕方なく再び院長へと目を向けた。
立場上、他人に異質な目で見られるのは慣れてる。
だがあの中年女の目はそれとはまた少し違っているようで、小骨が喉につっかえるような後味の悪さが尾を引いた。
「この子の父親は昔ガルマー警部が逮捕した窃盗犯なんですの。ある時、彼は罪を隠す為に幼いティモシーに盗品を飲み込ませました。父親の刑が執行されて警部がティモシーを此処に連れて来た時には、この子はもう今の姿になっていて…」
(…可能性有りだな)
(ああ)
院長の話で確信した。
向かいの席に届かぬよう、マリの能力で脳に直接届けてくる声に心内で返す。
怪盗Gとしてのガキの能力は恐らく、あの額の玉によるもの。
そしてあの額の玉は恐らく、その飲み込んだ盗品によるもの。
人智を超えた不可思議な力。
イノセンスである可能性は高い。