My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「見せるのはその意味の記憶だけにしろよ。他の余計なもんは要らねぇから」
「なんじゃ、余計なもんとは。雪の記憶だぞ」
「だからだろ」
だから?
「好き勝手頭ん中覗けるお前には、朝飯摘まむようなもんかもしんねぇけど…それは他人の記憶だ。本来は無関係な者が勝手に漁っていいもんじゃねぇんだよ」
その目は屍となった小鳥を映して、手にした煙草を再び咥え込む。
成程、最もなことを言うのう。
…じゃがの、
「正論を吐いているつもりの所悪いが、御主がそのような思考の持ち主だとはワタシは知らなんだ」
主にそのような他者への思いやりがあったとは、信じ難いのう。
「…だから人の頭覗くなって言ってんだろ」
「ののぅ。覗かなくてもわかるわい。いつからそのような"善人"になった?ティキ・ミック。ワタシは背中が痒いぞ」
いくら普通の人間を愛そうが、御主が黒(ノア)の顔を隠し切れぬことは知っておる。
白(人)として人間と笑い合い暮らす反面、黒(ノア)として時には楽しんで殺しもするだろう。
特に"快楽"のノアメモリーを持つノアの力は、代々大きなものだったからのう。
人を愛するが故に無意識に力を抑え付けていたようだが…方舟でアレン・ウォーカーの退魔の剣を受けてその力が覚醒してからは、黒(ノア)としての"快楽"は強まったはず。
ワタシの魔眼は誤魔化し切れぬぞ。
薄い笑みを向けてやれば、ジト目で睨み返してきていた顔がやがて諦めたように消え去った。
軽く両手を挙げて、降参とばかりに折れたのはティキ。
「はぁ…だから俺、お前苦手なんだよ…なんか見透かされてる気分になる」
「のの~御主がわかり易いだけだのう~♪」
「…くっそムカつくんだけど…」
口元をヒクつかせるティキに、これ以上弄るのは止めておくかと潮時を悟る。
あまりからかうと、こ奴は面倒事を嫌う性格だからのう。
逃げられてしまうわい。