My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「気になるなら覗いてみるか? また雪の元へ連れていっても良いぞ」
一度雪の意識に繋げた時に、ティキの精神も共に連れていったことがある。
雪の中にノアの覚醒に似た兆候を見つけて、嫌な予感がすると慌てたワタシを見たティキが自らついて行くと申し出た。
あの時は珍しいと思ったものだが…雪と言葉を交わすティキを見て悟った。
やはりこ奴は雪を気に掛けておる。
蚊の鳴くような微かに小さな思いであっても、それは確かなものだった。
面白い者には純粋に興味を持つが、この掴み所のない好奇心は相手の言動一つで簡単にその興味から外れる。
そして興味の対象であろうがなかろうが、気分が乗ればその者を殺すことも躊躇などしない。
ティキとはそういう男だ。
流石に家族を殺したりはしないが、我らと馴れ合うことはあまりしない。
寧ろ、本人が白と称している生活で関わりある人間相手の方が、余程執着しているように見える。
この男が好いているのは恐らく、ノアやエクソシストよりも単なる"普通の人間"だ。
じゃから雪に興味を示す姿は、珍しいと思ったのであろうのう。
「今ならまだ夢の中であろう」
誘えば、再びワタシへと向く切れ長の目。
その色はノアの金色のものではなく、普段人として成り済ましている時の暗い色のもの。
この屋敷にはデザイアスの妻を始め、普通の人間も住まわしている。
彼らはワタシらが"ノア"という人間とはまた違う存在だということを知らない。
じゃからこうして此処に身を置いている時は、ワタシらも"普通の人間"として成り済ます。
此処の人間達に害を与えるつもりはないからの。