My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「それより、ワイズリーこそ何してたんだよ」
「何、とは?」
「どうせまた雪の頭ん中覗きに行ってたんだろ」
カチリ
安物のライターの火花が微かに散って、ティキの口元を照らす。
吸い込んだ息を吐き出すように、白い煙を吹きながらティキの切れ長の目だけがワタシへと向いた。
「ノアの覚醒でも近付いた?」
「いや。まだその兆候は見えておらん」
「そ」
首を横に振れば、自然とその目は逸らされる。
ぐしぐしと無造作に癖の強い髪を掻いて流せば、露わになるのは端正な顔立ち。
この無駄に顔の良い男は、身形がこう汚かろうが黙っていれば様になる。
こうしてベンチに凭れて煙草を吹かす姿でさえ、オナゴであれば目を止めるものなのだろう。
美しいもの好きなデザイアスが、事あるごとにティキに愛情表現を向けるのは正にこの姿故だ。
男色の気はないが、それくらいワタシにもわかる。
それだけこの男の容姿は、顔立ちから体格まで非の打ち所がない。
……本人はそんな自分の顔を嫌がっておるようだがの。
「どうだった、雪。元気そう?」
「……気になるのか?」
問いに問いで返せば、返答はなし。
その目は眼下の池に注がれたまま。
…頭の中を覗き見れば答えを知ることなど簡単だが、この男はそれを嫌うからのう…。
……まぁ、覗かなくともティキが雪を気に掛けておるのはわかっておったが。