My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「で? いつから動物虐待が趣味になったの、お前。ロードの癖でも移った?」
「違うわい。ワタシは無益な殺生などせんぞ。人間相手ならまだしも」
未だに掌の中でビィビィと濁った声を上げる小鳥の首を、輪にした指で挟み込んで締め上げる。
キュウッとか細い悲鳴のような声を上げてジタバタと暴れていた体だが、パキッとその首を捻り折れば忽ちに動かなくなった。
小動物を虐めて楽しむような性格は、ワタシは持ち合わせておらんぞ。
………人間なら別だがのう。
「これはワタシの朝飯だ。唐揚げにでもするかのう」
「んなもんこの屋敷で食ってるのバレると、それこそシェリルにドヤされんぞ」
「じゃって此処の料理は、ワタシには合わないんじゃもん…」
「…ああ。それはわかる」
ティキと同時に両肩を落として溜息。
別に此処の料理が不味いと言う訳ではない。
寧ろ三ツ星がつくような高級料理ばかりだろう。
じゃが生憎ワタシもティキも、そういう料理は好みではなかったらしい。
昨日ティキが参加させられたらしい、茶会とやらもそうだ。
あれは茶会と言うより最早食事会に近い。
味音痴(とデザイアスには言われておる)なワタシらの味覚を正す為のものだと、やたら気取った料理名の食事ばかり摂らされる。
ロードは面白がっておるようだが…ワタシとティキには、あれは居心地の悪い時間でしかない。
「不満ならば何故まだ此処におるのだ。主の家は此処ではないだろう?」
養子であるワタシとは違い、デザイアスの義弟という役割で人間界で生きているティキなら、この屋敷からいくらでも逃げ出せる。
屍となった小鳥の羽を毟りながら問いかける。
素揚げでよいか、塩でも塗せば美味かろう。
「んー……俺も朝飯でも食おうかなって」
「………鯉か?」
ジーンズのポケットから取り出した煙草の箱を口元に寄せながら、ティキの目がじっと見下ろしているのは池の中を浮遊する色鮮やかな大きな鯉達。
生魚を捕まえてはよくそのまま食しておるティキだが…此処の鯉を食い散らかせば、流石のデザイアスも怒りを露わにすると思うぞ。
言わずともワタシの表情で読み取ったのであろう。
煙草を咥えながら、肩を竦めて「冗談だよ」とティキは笑った。