My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「こっちに来て座れ」
「え?」
「いいから来い」
「…ユウと暖取り?…柵あるし、難しいんじゃ…」
言いながら大人しく目の前に座り込む雪に、着ていたコートと団服を脱ぐ。
柵の隙間から団服を押し込んで、その体を包むように背中から被せた。
「それ着てりゃ寒くねぇだろ」
「え…でもそれじゃユウが寒いでしょ…っ」
「俺はコートがあるから平気だ」
再び真っ黒なロングコートに袖を通して着込む。
団服がなけりゃ確かに寒さは感じるが、俺にはコートがあれば充分だ。
これくらいの寒さ。
無駄に馬鹿高い金をかける団服だから、保温性はファインダーのマントより優れてるはず。
その読みは当たって、俺用にロングデザインされた団服にすっぽり包まれた雪は、さっきから微小に震えていた動きを弱めた。
「…ユウの匂い、する」
「………変態か」
「んなっ」
団服の前を掛け合わせて、すっぽりと口元まで覆った雪が緩んだ顔で嬉しそうに呟く。
ほわほわとしたその反応に、つい返してしまったのはいつもの憎まれ口。
…別に緩んだ顔で俺の匂いだなんだ笑う雪に、絆された訳じゃねぇからな。
胸の辺りに感じた変な動機はきっと気の所為だ。
違うからな。
違うからそんな顔で笑うのはやめろ。
心臓に悪いんだよ。
「私が変態なのは、ユウ限定だもん」
開き直った様子で、団服に足先まですっぽり入り込んだ雪が多少むすっとした顔で言い返す。
わかったから、もうそれ以上言うな。
…気の所為にできなくなるだろうが。