My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
柵の隙間に手を伸ばす。
「嫌だなんて思わねぇし、お前自身の心で抱えた想いなら…触れていたいと思う」
腕一本だけ入り込むことのできる僅かなその幅を通って、傍にある雪の肌に触れた。
「だから俺に何か思いがある時は、そうやって口に出せ。弱音や失敗だって聞いてやるから」
「……みっともなくても、いい?」
「ああ」
……というか、だからだろうな。
弱い自分の姿なんて、お前周りにそう見せようとしねぇだろ。
そうやって一人で抱えてるもんがあるなら、出せる思いがあるなら、俺が受け止めていたいと思う。
「みっともなくても、それがお前自身のもんなら…お前自身の言葉なら、耳を傾けていたいんだよ」
少しやつれた目元に触れて言えば、暗い色の目がぱちりと瞬く。
「…うん」
その目元が柔らかく細まる。
目元に伸ばした俺の手に触れる、少し小さな手。
「ありがとう、ユウ」
その両手が俺の手を握ると、ゆっくりと口元に寄せた。
軽く俺の指先に触れる雪の唇。
「…大好きだよ」
唐突に告げられた言葉だった。
「大好き」
極々ありきたりな好意の言葉。
それでも噛み締めるように繰り返す、雪のその声と姿だけで充分だった。
それ以上も以下もない。
その声が、その姿が、俺の意識を捕らえて離さない。
俺と雪の間を鉄の格子が隔てているのに、そんな存在さえ気にならなくなる程。
目の前の雪しか見えない。
「…ああ」
そんな雪に応えようと、俺も同じに言葉を繋げ──
「おい?」
否。
口にしようとした言葉は止まってしまった。
吐き出したのは問いかけ。
疑問はすぐ目の前にあった。
何故か俺の手を握った雪の両手が、ぷるぷると謎の震えを起こしていたから。
…なんだその微小な動きは。