My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「…あのね。私にとってこれは、ユウの思う形とはちょっと違うかもしれないけど……でも、私にとってもこれは"枷"だよ」
座り込んだまま、体の向きを変えて俺に向き合う。
そうして再び数珠へと目を落とすと、雪はまたひとつ笑った。
「私とユウを繋げてくれてるもの。"縛る"って言葉、表現として良いものじゃないのかもしれないけど……私は、嬉しいんだ」
その笑みが苦いものに変わる。
少しだけ、申し訳なさそうに。
「私の想いはそう綺麗なものじゃないから。…いつも一人で立っていたユウだから。一人でもきっと歩いていけるユウだから…だから縛っていたい。一人で何処にも行かないように。もう一人で立ち続けなくていいように。鎖で繋いで、縛り付けて、私の傍に置いておきたい。心も体も」
「……」
いつも本音を口にする時は、辿々しく言葉にしていた雪。
最近は、その口から出る本音は幾分素直さを増したように思う。
だけどここまではっきり、その想いの形を言葉に成してきたのは初めてだったから。
咄嗟に返す言葉は出ずに、ただただ雪のその姿を黙って見続けることしかできなかった。
そんな俺の視線に耐え切れなくなったのか、僅かに顔が俯く。
「前は…そんな自分の想いが気に入らなかったけど…どう足掻いたって、それが私だから。それなら私自身の想いをちゃんと抱えていこうと思ったの。…だから…これは私にとっても"枷"なんだよ。見えないものも、見えてるこの形も。私にはどっちも大切なもの」
鼾混じりの独房の中でなんとか届く、雪の小さな声。
…義務じゃない。
俺が"枷"になれと言ったから、こいつはなったんじゃない。
自ら望んで鎖になってる。
そう悟ると、驚きはあったがそれとはまた別の思いが沸いた。
……綺麗だなんだ、んなこと関係あるか。