My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
割と騒音にも思える、野郎共の鼾で溢れた独房。
よくこんな所で寝付けたもんだと感心さえしながら見渡した目を雪に戻せば、背中を向けたまま縮まる姿は変わらないまま。
少し首を横に傾ければ、じっと手を握る動作が見えた。
握る先は左手首。
その目は恐らく、あの数珠に向いているんだろう。
「……」
背中を向けているから、どんな表情をしているのかはわからない。
だがなんとなく察しはついた。
「…次、」
「え?」
「次にそいつを失くした時は、俺に言え」
振り返った雪の顔はきょとんとしたもの。
だがなんとなく俺にはわかった。
初めて数珠を預けた時と同じだ。
緩みきった顔で、何度も数珠に目を落としては笑っていた。
恐らくさっきもそれと似た顔をしていたんだろう。
…こいつにとってそれだけ、その数珠はでかいもんだ。
「探すことくらい一緒にしてやる」
「……」
雪の目が無言で瞬く。
まじまじと俺を見上げて、それから──
「…うん」
ふや、と柔らかく緩む。
数珠を預けたあの日に見せた、あの表情と同じもので。