My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
時には嘘が必要なことだってある。
相手を思いやるが為に、つく嘘だってある。
でもここまで言われて真実をはぐらかすことは、ユウを傷付けることにしかならない。
恋愛に疎い私の頭でも、それはわかったから。
だから真実を告げた。
「……」
……告げたんだけど。
返事はない。
私の手首を握った手が、ピクリと僅かに反応しただけで。
その静か過ぎる沈黙に耐え切れずに、そうっと伺うように顔を上げれば──
「っ」
ぞわっと肌が粟立つ。
見えたのは無表情に一切感情を見せていないのに、凍るような殺気を静かに纏った鬼。
あ、殺される。
「ご、ごめんなさい!!!」
上げた顔を再び下げる。
マッハの速度で。
「任務から帰ったらって言ったんだけど流れでされたというか…! 今欲しいとか言わなかったんだけど…!」
何言ってんの私。
今そんなこと言ったって言い訳にしか聞こえないから。
寧ろ煽ってるだけだから。
自分の命縮めてるだけだから!
なのに口は止まらない。
次に沈黙を作れば制裁しか待ってない。
それが恐ろしくて、口はマシンガントークのように謝罪を打ち込んだ。
目の前の氷の鬼に。
「ユウだと思ってたから逆らえなかったというか逆らう気なんてなかったというか本当ユウだと思っ」
「雪」
「はい!」
止めたのは静かな声。
ビシッと背筋を正せば、左手首を掴んでいた手が動いて…わお。
手首を背後の壁に押し付けられました。
「ユ、ユウ…っ」
動揺を隠しきれないでいると、今度はもう片方の手が肩を掴んできて…わお。
またもや後ろの壁に縫い付けるように、押し付けられました。
……え、何。
何この、身動きを制限してくる押さえは。
このままヘッドバットでもするつもりですか。
ユウ程の馬鹿力があればプロレス技以上の威力出ますから。
やめましょうそんな美形が勿体無い。
綺麗なお顔を凶器にしちゃ駄目です。