My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
クスクスと思わず声に出して笑えば、目の前の顔が顰められる。
「なんで笑ってんだよ」
「ふふっ…ううん。ルパンと同じこと言ってるなぁって。やっぱりあの人の変装は凄いよ、ユウ」
外見や身振り手振りだけじゃない。
その中身までも本物に寄せることができるから、簡単に周りも騙されちゃうんだろう。
ある意味、キスしておいてよかったかもしれない。
偽物だって気付くことができたから。
「…どういう意味だそれは」
クスクス笑い続けていたら、不意に手首を掴むユウの手が強さを増した。
…あ。
「何をどうしたら、あの猿とキスの話なんざするんだ」
「……」
………ま…まずい。
つい何も考えず口走ってしまってた。
この洞察力高い鬼の前で、言ってはならない言葉を。
「あいつにも同じこと頼み込んだのか」
「…ぃ…いや、そんな…」
「あ"?」
「すみませんッ! ユウだと思ってたからつい!!」
手首を握る手が更に力を増す。
すぐ目の前に座っている至近距離の顔が瞬時に鬼のそれへと変わって、もう頭を下げる以外選択肢は私の中になかった。
怖いです!
「それであいつはなんて応えたんだよ」
「…わ、わかったって…」
「それで?」
「…約束、するって…」
「…で?」
「そ、れだけ…」
「で?」
「……」
え、なんでそんな先を促すんですか。
それだけですよ…それだけ。
それだけって言ってるのに…いやそれだけじゃないんですけど実際は。
でもなんでそんなわかった顔で先を促してくるんですか。
なんでわかるのほんとに。
こういう時にAKUMA討伐で使うような勘の良さを発揮させないでよ…!
「言っただろ、俺を頼れって。耳なら貸す。なんにでも冷たい訳じゃねぇよ」
「……」
既に身も凍る悪寒を感じさせてる時点で充分冷た…あいやなんでもないですすみません。
「だからちゃんと言え」
念を押すように促される。
ちゃんとって……ルパンとの間にあったこと?
ど、どうしよう…どっちの選択肢を取れば正解なんだ。
①正直に話して拳骨を貰う
②嘘をついて締められる
あ、どうしよう。
どっちに転んでも結果は同じだった。