My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「ったく」
正直に言えば、呆れた顔で溜息をつかれた。
「怪我負ってまであの泥棒から取り返そうとしたんだ。それだけの思いがあるんだろ。違うか」
「…違わない」
ああ、バレバレだなぁ…私の思い。
「俺にはその数珠自体に思い入れはない。…だからってお前も同じでいろなんて言わない。それはお前に預けたんだ、今更返せなんて言わねぇよ。大事にしたけりゃしてろ」
それって…もう預けるというより、贈呈された気がするんだけど…。
ユウの手が私の左手首に触れる。
硬くて丸い数珠を、指先で軽く撫でるように。
「だからなんでもかんでも一人で解決しようとすんな。無理な時くらい頼れ。その思いに応えてやらない程、俺は冷たくねぇよ」
その手が手首を握り込む。
数珠ごと覆って、そのまま引かれた手はユウの胸元に寄せられた。
「言っただろ、"月城雪"が俺の枷だ。だから俺の傍にいろ。体だけじゃなく心で、ちゃんと」
五ヱ門とはまた違う、漆黒の瞳が私に向けられると捕らえられたように逸らせなくなった。
…ああ、本当だこれ。
咄嗟に銭形警部の言葉を止めるために口にしたけれど。
私の心は、とっくにこの人に奪われてる。
大泥棒でも盗む隙なんてないくらい。
「…うん」
気付けばすんなりと返事は口をついていた。
…今なら素直に甘えられるかも。
「じゃあ…あのね……お願いが、あるの」
恐る恐る問いかければ、応えずとも目で先を促される。
ちゃんと聞いてくれている。
その姿に、ユウに握られた左手をそっとその胸に当てた。
「任務が終わって帰ったら…沢山ハグして…沢山、キスも欲しい」
それはユウに変装したルパンにお願いしたことと、同じこと。
口直しのキス、なんて言わないけど。
ルパンとしてしまったから…ユウのそれで上書きして欲しいと思った。
私が求める温もりは、他ならぬこの人のものだから。
「キスって…そんなんでいいのかよ」
どこかきょとんとした顔で問いかけてくる。
その言葉は、ユウに変装していたルパンが放ったものと同じもの。
まさか全く同じ言葉を発するなんて。
偶然の一致に、つい笑ってしまった。