My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「…そうか」
曖昧な表現はしたけど、私に想い人がいることは伝わったんだろう。
私の言葉に、下睫毛の長い真ん丸な目を更に真ん丸にして、やがて銭形警部は厳しく固めていた表情を緩めた。
「これは失礼した。…ガルマー警部は私が宥めておくから、きちんと手当てを終えてから出てくるといい」
「はい。ありがとうございます」
背中を向けて部屋を出ていく銭形警部に、軽く頭を下げて目だけで見送る。
ルパンとなると見境ないけど、普段の彼はやっぱり出来た大人だと思う。
パタンと閉じられる喫煙所の扉に、静寂が部屋の中を包み込む。
目の前のユウを恐る恐る伺えば、その目は手当てする私の腕に落とされたままだった。
「……アレンとリンクさんは?」
「マリと怪盗Gの追跡の方に出てる」
「…そっか」
心を奪われてます、なんてある意味、間接的な告白をしたようなものだから。
それが少し気恥ずかしくて沈黙に耐え切れず問いかければ、その目は腕に向けられたままさらりと返された。
「…G、捕まるといいけど」
「言っただろ、ちゃんと捕まえる。お前を囚人にはしない」
「………うん」
最後の絆創膏を貼り終えて、やっと顔が上がる。
その目が真っ直ぐに私を見つめて、迷いなく告げられる言葉。
たったそれだけのことで胸の内に広がる安心感。
ほっとする。
やっぱりそれはユウから貰える言葉だから。
「…それ、」
「え?」
だけど不意にその黒い目が私から移り変わったのは、左手首の数珠。
「あの猿泥棒に渡されたのか」
ぼそりと問いかけられる声は、少しだけ意図的に低い。
…そういえば数珠を盗まれたことを黙ってたなって指摘してきたあれは、ユウに変装したルパンだったけど…やっぱり本物のユウにもバレてたんだ。
ルパンに数珠を盗られたこと。