My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「悲しむ顔より笑ってる顔の方が可愛いからよ。笑ってな」
「…煽てても何も出ないけど」
「酷ぇなぁ、オレ様本音だっての」
…うん。それはね、なんとなくわかった。
最初に出会った頃の手当たり次第な煽てには聞こえなかったから。
だからつい素っ気無く返してしまえば、気にした様子なく笑われる。
「一つオレから助言だ、雪。人生を楽しむコツってもんを教えてやる」
「楽しむ?」
「ああ」
ポケットから出した片手の人差し指を立てて、不意にそんなことを告げられた。
いきなりなんだろう。
この人生愉快そうに生きてる大泥棒のコツなんて、ちょっと気になるけど。
「楽しむコツはな、どれだけ馬鹿なことを考えられるかだ。戦争してたって泥棒してたって、誰しも皆、同じ。そいつは自分の人生だ。楽しまなけりゃ損だぜ」
…ああ、なんか、ルパンらしいなぁ…。
どこまでも自由でどこまでも遊び心を忘れない、神出鬼没の大泥棒。
そのにんまり笑顔につられるように口元が緩めば、ルパンの笑みはまた優しいものに変わった。
「…さっきも言ったけどよ、お前は良い女だ。オレが恋人だったら放っちゃいない」
──ザ、
雪を荒々しく踏む音。
ゆっくりとルパンが振り返る。
その目が捉えたのは、六幻を構えたユウの姿。
「だから縛るならしっかり縛ってろよ。オレみたいな泥棒に盗まれたくなけりゃあな」
その言葉は私ではなく、視線を絡めたユウに向かって発せられた。
「…ったり前だ。テメェなんかに盗られて堪るか」
返されたのは低く静かな声。
…もしかして…さっきのルパンの言葉、聞こえてたのかな…?
思わずまじまじとユウを見ていたら、スッとその手が六幻を振り上げて──
あ。
「だからいい加減離れやがれ!!」
「わあああ! ストップ! ユウストップ! 界蟲禁止!!!」
「どぅわーッ!! 待て待て! 離れたから! はい離れましたー!!!」
…結局、鬼と化したユウによってその場は修羅場と化したんだけど。