My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「もし不二子ちゃんが…ルパンの愛する人が、実は警察側の人間だったりしたら。ルパンはどうする?」
「なんだそりゃ。オレへの謎かけか?」
「ただ単にルパンの答えが知りたいだけだよ」
不二子ちゃんを私の立場と置き換えて問いかける。
こんな問い、結局は単なる架空のもの。
下らないとは思うけど…問いかけられずにはいられなかった。
真っ直ぐに近くにあるその瞳を見返して問えば、不思議そうに見ていた表情を止めて、ルパンは口角の上がった癖ある口元を緩めた。
「…オレはな、雪。三つ条件の揃った女を見るとどうしても欲しくなんのよ」
「条件?」
「一つ。美人であること。二つ。プロポーションがいいこと」
「…うわ何それ」
指を一つずつ立てながら出されるルパンの回答に、思わず顔を顰めてしまう。
それってやっぱり不二子ちゃんのこと、外見で好きになったってこと?
「三つ。オレの敵であること」
最後は年齢でも言い出すかと思ってたから、予想外の答えに目を瞬いてしまった。
…敵?
「だから不二子はオレには堪らなく魅力的な女ってワケ。警察だったとしてもオレには関係ねぇな」
…成程。
だからあんなにカモにされても平然としてたんだ。
……でもそれはルパンだから持てる考えだろうなぁ…。
やっぱり色んな意味で特殊な人だと思う。
「…まぁ今挙げた理由は、出会い当初の頃のもんだったんだけどよ」
「え?」
なんとなく納得していれば、続けられた言葉に思考が止まる。
「雪だって言ってただろ? 相手を好きだって想いが根本にありゃいいって。オレは不二子が好きだ。だから許せちまうんだよ」
不意に伸びた手が、微かに私の頬に触れる。
茜色の揺らぐ炎の光に半分だけ照らされたルパンの顔が、同じに揺らめいて見えた。
「警察であろうが盗賊であろうがオレをカモにしようが。何度だって裏切ったっていいさ。不二子らしく生きていてくれりゃあ、それでな」
その目は私を見ているけれど、私を見ていなかった。
優しく僅かに細められる瞳。
これは…私じゃない。
愛する人を想い見ている目だ。