My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「──ふぅ、危ねぇ危ねぇ。やっぱ怖ぇなぁ、雪の恋人は」
パチパチと焼け崩れた車から上がる炎。
その茜色に近い光に照らされながら、目の前に立つルパン。
柔らかい雪の上に座り込んだまま、そんな彼を見上げる。
「まぁ割と面白かったぜ、ここ数日のこと」
「はいはい…それより早く逃げなくていいの?鬼が向かってきてるよ、こっちに」
「…そうだな。このままじゃあれに殺されそうオレ」
あの爆発から間一髪抜け出すところは流石だけれど。
…でも多分あの鬼が此処に辿り着いたら殺されますよ。
遠目に見えるユウに視線を向ければ、同じく顔を向けたルパンがしみじみとぼやく。
命の危険性は感じてるんだね。
「ルパン、行くぞ!」
「ああ」
先に駆け出す次元と五ヱ門に声だけかけて、再び私へと視線が向く。
「どうやらここでお別れみてぇだな」
「…何そのしんみりした言葉。ルパンらしくない」
「そうか?」
いつもの軽い口調じゃなく、真面目に聞こえる静かな声。
いつもいつもふざけてばかりいた彼には似つかわしくなくて、つい素っ気なく返してしまった。
なのに目の前の顔は優しい笑みを浮かべたまま。
「雪があの男をどんな想いで見てるのか、全て把握した訳じゃねぇけどよ」
不意に屈む体。
顔の距離が近付く。
「そういう想いの形もあるもんなんだなって、学ばせてもらった」
"そういう"と言ったルパンの目が、私の左手首にはめられた数珠を映す。
それって……枷のこと?
そういえば枷だって言ったら、"それでいいのか"って問いかけてたよね。
確かに…普通恋仲で持つようなものじゃないのかもしれないけど。