My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
ユウのイノセンスを発動させる行動に、目を止めたのは私だけじゃなかった。
「雪ちゃん、あれ何」
「……イノセンス発動してらっしゃいます」
「あちゃ……よし、ずらかるぞ。出せ次元」
「おうよ」
「えっ!?」
その言葉の意味が何を示すのか、頭の切れる大泥棒には理解できたようで。
私の解答にヒクリと口元を震わせたかと思えば、くるりとユウに背を向けてルパンは運転席の次元に指示を出した。
ってなんでそこで逃げの選択!?
せめて私を解放してからにして!
「待っ…! つぅ…!」
ルパンの一声でエンジンのかかった車が急発進する。
思わず叫ぼうとすれば、がくんっと急に起きた大きな揺れで舌を噛んでしまった。
い、痛いぃい…!
「おぉ、こんな所で大声出せば舌噛むからな。気ィ付けろよー」
言うの遅いからそれ…!
思いっきり舌を噛んで悶絶している私に、飄々と今更ながらルパンが忠告してくる。
口を押さえたまま何も言い返せずにいれば、走りゆく車の上から見えたもの。
五ヱ門が脱出の為に斬り開いた穴から飛び出す、見慣れた一つの黒い影。
あ。
「待って神田! 相手は一般人ですから…!」
「災厄招来(さいやくしょうらい)」
響いたのは焦りの混じるアレンの声。
その声をガン無視したまま、淡々と影が述べるその言霊は…げっ
ま、待ってユウそれってまさか…!
「界蟲"一幻(いちげん)"!!!」
飛び出した黒い影が、夜空を舞いながら六幻を一振りする。
するとその刃から目玉と鋭い刃を備えた無数の蟲のような生き物が、一直線にこちらへ向かって飛び出した。
見た目はジブリのナウシカに出てくる王蟲に似てるなぁって毎回見る度に思うんだよね、あれ。
そんな王蟲似の界蟲を飛ばすそれは、ユウの六幻の攻撃技の一つ。
振るった刃から殺傷能力を持つ蟲を飛ばして、遠距離でも攻撃できる技だ。
界蟲達はユウの意思通りに飛ばしてAKUMAを襲わせることができる。
…そう、AKUMA相手に使うイノセンスの攻撃技。
決して、私達一般人に向けて放つものじゃない。