My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
咄嗟に体を暴れさせれば、ひょろっとした腕なのにしっかりと押さえ込まれた。
「だから暴れんなって!」
「暴れるでしょ普通! 私は置いてってよ!」
「何雪ちゃん、男共の巣が気に入った?」
「誤解!誤解を招くような言い方しないで!」
開いた小型車の屋根の入口から乗り込むルパンに、そこから身を乗り出したまま互いに大声を張り上げる。
そんな騒動を繰り返していると、傍で共に乗り込んでいた五ヱ門が溜息をついた。
あ、なんか呆れられてる気がする。
「オイ上でぎゃーぎゃー騒ぐなよ! 不二子を追わなきゃなんねぇってのに!」
同じく呆れながらハンドルを握ったまま、声を張り上げてきたのは次元。
文句はルパンに言って下さい!
「そうカッカすんなよ次元。不二子はいつものことだろ? 裏切りは女のアクセサリーみてぇなもんだ」
「お前がそんなんだから、毎回良いカモにされんだよルパン…!」
肩を竦めるルパンの言葉に、不満そうな次元が噛み付く。
ルーブル美術館の前で不二子ちゃんの名前を口に出した時もそうだったけど…次元は不二子ちゃんのこと、あまり良くは思ってないらしい。
毎回カモにされてちゃそうなるのかもしれないけど………ルパンが凄いんだろうな。
裏切りは女のアクセサリーって。
簡単には吐けない言葉だ。
「だってなぁ──」
「しッ! 静かにッ」
言葉を発しようとしたルパンを止めたのは、着物を纏った腕だった。
遮るようにルパンの前に片手を突き出して、その黒い目は真っ直ぐどこかに向いている。
そんな五ヱ門の喝を入れるような声に、ぴたりと私達は動きを止めた。
何?
五ヱ門の目線を追えば、そこは面会室の出入口扉。
ガチャリと、鍵を回すような音が聞こえた気がした。
「此処です! 此処に話がしたいと連れ込んで…ッ」
同時にバタンッ!と荒々しく開く扉。
聞こえたのは、私をトイレに連れて行こうとしてくれていた看守さんの声だった。
だけどその扉の向こうから飛び出してきたのは彼じゃない。
ルパンが着ている服と同じ、真っ黒な団服。
同じく真っ黒な長い髪を風圧で靡かせて、その隙間から見えた鋭い瞳と──…目が合った。
あ。
「ユウ…?」
其処に立っていたのは、神田ユウその人の姿だった。