My important place【D.Gray-man】
第40章 パリの怪盗
「っ此処から出して…! 私達は盗みなんてやってないから…!」
咄嗟に独房の硝子に張り付く。
だけど監視として立っている警備員は、一度もこちらに目を向けなかった。
「無駄よ、アタシ達全員"怪盗G"として疑われてるんだから」
「え?…どぉわっ!?」
振り返れば、視界いっぱいに広がるさっきの厚化粧お化け。
思わずびたりとガラスに背を付く。
ち、近い怖い!
「もう、そんなに怖がらないの。噛み付いたりしないから」
うふん♡と長いばっさばさの睫毛でウインクしてくる、無精髭を生やした……ぉ…男の人。
声、低いし。
無精髭生やしてるし、この骨格。
男の人、だよね…凄い厚化粧だけど。
……誰ですか。
「あんまり怯えてると摘まみ食いしちゃうわよ」
「ひ…っ」
「おいっやめろよ雪が怖がってんだろ!」
ねっとりと舐め回すように体を視線が辿る。
ぞわりとサブイボを体中に立たせていると、ずいっと横からバズが割り込んでくれた。
バズ…!
なんか凄く恰好良いよバズ!
「あらん? アタシ、強気な男も嫌いじゃないのよねぇ………後ろ掘られたい?」
「ッ!…す…スンマセン…」
「わかればいいのよ」
も、束の間。
にぃんまりと笑う厚化粧お化けの言葉に、急激に顔色を悪くすると私同様、バズもガラスに背中を付けて後退ってしまった。
後ろを掘るって……あ、この人そっち系なんだ…。
道理でこの風貌にこの喋り方。
…教団のジェリーさんと同じだ。
恐らくこの厚化粧お化けさんは、オカマさん。
(それも恐らく攻め専)
……なんでこう…こういう人達って筋肉ムキムキでゴツい人多いのかな…。
ジェリーさんといい、この人といい。
「まぁまぁ。雪、そう怖がんな。このボネール姉さんが警察に頼んでくれたお陰で、その足首の手当てできたんだからよ」
「え?」
苦笑混じりに話しかけてくるジジさんが、私の左足首を指差す。
そういえば…少し違和感はあるけど、捻ったはずのそこはそんなに痛くない。
見下ろせば、しっかりとテーピングされて固定されていた。
いつの間に。