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My important place【D.Gray-man】

第40章 パリの怪盗



「───雪っ!」

「っ…?」


 強い声で呼ばれる。


「雪っ!起きろ!」


 あ…この声、知ってる。
 ここ数日ずっと聞いてた声。
 これはジジさんの──





「あらん♡ おめめ開けたら可愛いじゃないの」





 ぱちり


 開いた瞼の向こうにいたのは、人成らざるものでした。





「うわぁああ!?」


 視界いっぱいに広がる、濃い化粧を施した巨大な顔面。

 ばっさばさに長い睫。
 ぷるるんと分厚く真っ赤で大きな唇。
 骨張ったゴツい輪郭。
 顔半分を覆う程の無精髭。

 何この色んな性別が入り混じってる顔…!

 人のようで人成らざる顔がすぐ目の前にあって、にぃんまりと笑ってる。 
 あまりの恐怖にパニックに陥った。


「お、おばっお化け…!?」


 な、な何何…!


「んまっ! 酷いわねぇ人の顔見てお化け呼ばわりなんて!」

「その気持ちはわかるぜ、雪…」

「なんか言った?」

「ぃ、イイエ!」


 急に視界を埋め尽くしていた、お化けの顔が退く。
 聞き覚えのある声を耳にしながら、次に視界に入り込んできたのはこれまた無精髭の顔。
 だけど、酷く見知った顔だった。


「やっと起きたか雪! 驚かせちまってごめんなぁっ」

「…ぁ…ジジ、さん…?」


 ジジさん、だ。

 ドレッドへアーに色付き眼鏡。
 無精髭さえもなんだか見ていてほっとする。
 知ってる人だ。
 …怖い無精髭のお化けじゃない。


「起きられるか?」

「はい……というか、此処…?」


 差し出された手を掴む。
 引っ張り上げられて、自分がその場に倒れ込んで意識を失っていたことに気付いた。

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