My important place【D.Gray-man】
第40章 パリの怪盗
真っ暗
真っ暗で、心地良い闇
ずっと浸かっていたいような、そんな暗闇の世界
──ねぇ、この花知ってる?
…あ、また
聞いたことのある声がする
優しくて、温かみのある女性の声
──泥の中から天に向かって生まれて
──世界を芳しくする花なのよ
…あ、また
知らない二人の男女の姿
真っ黒な団服に身を包んだ二人の背中
沢山の蓮華に囲まれて、光輝く向こう側へと消えていく
とても温かくて幸せそうな光景
なのに
なんだか、凄く哀しくなる光景
…待って、行かないで
私を
置いていかないで
──ホントに?
──おじいさんとおばあさんになっちゃってもよ?
その声は泣きたくなるような
儚い響きをしていて
聞いているだけで、こっちまで胸が締め付けられた
なんでだろう
わからないけど
その人の声に同調したくなる
なんだかその人の気持ちがわかる気がする
だって私も同じだったから
ずっと、あの人と一緒に生きていきたいって──
──…待ってるね、ずっと…
…あ
咄嗟に手を伸ばそうとして見えたのは、二人の繋いだ手
男性の手首に飾られている、どこか見覚えのある臙脂色の数珠
それ…私が、預かってるの
私に持たせてくれたものだから
返して
そう言いたいのに
口から言葉は吐き出せない
返す?
ううん、違う
預かってろって言ったんだ、あの人は
あれは私にくれたものじゃない
私のものじゃないから
──…待ってる
…私の、ものじゃない
あの数珠も
─────…あの人も