My important place【D.Gray-man】
第40章 パリの怪盗
目の前の怪盗Gか、とんずらかます大泥棒か。
イノセンスの可能性のある事柄か、持ち逃げされようとしている国宝か。
一瞬迷ったけれど、決断させたのは。
「ジジさん、怪盗G捕まえてて!」
「へっ?…って待て待て雪! お前まさか…!」
一気に助走をつけて走る。
目指すは柵のない屋上の先。
怪盗Gはパリにしか出没しない泥棒。
逃がしてもまだ捕まえる機会はあるかもしれないけれど、ルパンは国宝を奪っていったんだから。
海外に逃亡なんてされたら捕まえられない。
その左手首には、ユウの数珠がはめられたまま。
私の大事なものを奪われたまま、とんずらなんて許す訳ないでしょ!
「こんの…ッ逃がすかコソ泥ーっ!!!」
「どぅわっ!? 落ちる落ちる! 重量オーバーだってぇえ!」
粉雪舞う空を跳ぶ。
そのままターザンの如くワイヤーを使って下に飛び下りようとしていた、赤いスーツに飛びついた。
突然かかった体重に、優雅に美術館下へと下りようとしていたワイヤーが軋む。
バランスを失った私とルパンの体は一緒に縺れて、一直線に美術館後方にあった公園の林の中へと落下した。
バキバキと木の枝を折って、ドスンッ!と地面に落下。
「あたた…雪ちゃん、乱暴ぉ…」
「人の大事なもん盗んでくからでしょ…っ」
私の上に乗ってないでよ! 重い!
「ったぁく、危ねぇことすんだからなぁ」
「っ…!」
体を退くルパンに、その場に立ち上がると同時に左足首に激痛が走った。
ズキリと嫌な痛み。
まずい、落下した時に捻ったのかもしれない。
「あららら。もしかして怪我した?」
足首を見て顔を歪める私に、それを悟ったのか。
問いかけてくるルパンをキッと睨み付ける。
「そんなこといいから、返してよそれ!」
「オレ様はルパン三世だぜ? 雪も言ったろ、狙った獲物は逃さな」
「違う数珠! 数珠返せ!」
「………あ、そっち?」
当たり前!