My important place【D.Gray-man】
第40章 パリの怪盗
「ちくしょ…オレを利用するなんて…ッ」
「利用なんざしてねぇよ。寧ろお前さんの手足になったんだぜ、オレ様。警備を手薄にすんのも逃げ道確保も、手間暇かかったんだからなぁ。大変だったのなんのって」
「なんだよそれ…オレは頼んでねーよ!」
「"罠"だってわかってて来たのはお前さんだ。悔しがる暇あんならよ、オレ様を出し抜けるくらいの算段を考えてきな」
逃げ道確保って…じゃあ怪盗Gが屋上に逃げるのは必須だったってこと?
よくわからないけど、私の知らない水面下で色々仕込んでいたらしい。
悔しそうに呻る怪盗Gに、肩を竦めてルパンは笑う。
つまりは、ルパンの助けがあって怪盗Gは国宝を盗めたってこと。
「お前が"ルパン"の名を背負うのは百年早いってこった。これで懲りたら出直しな、がきんちょ怪盗」
そう怪盗Gに語り掛ける顔は不敵な笑みを浮かべたままだったけれど、その声は幾分優しく聞こえた。
同じ"怪盗"である身。
もしかして…怪盗Gのことも案じていたのかな…?
……いやまさか。
「ちゃあんと休戦協定は守った。雪達の目的は怪盗G。そいつは渡してやるからよ」
仕切り直すように、ルパンの目が怪盗Gから私に移る。
「警察じゃねぇんだろ? ならオレ達を止める理由はねぇよな」
確かに、私はパリ警察じゃないから正義面して王冠を返せなんて言えない。
無理矢理とは言え、大泥棒とわかっていて手を組んでいたのも事実。
「ルパン、そろそろ行くぞ。追っ手がくる」
「ああ。ほいじゃあな~」
帽子に手をかけて、タンッと軽い身のこなしで柵のない屋上から次元が跳ぶ。
その後に続くように、王冠を脇に抱えたままルパンはひらりと手を振った。
踏み出した先は何もない美術館裏の崖っぷち。
パラシュートも何もない状態で、其処からどう逃げる気なのか。
見えたのは、腕時計からワイヤーのようなものを飛び出させて美術館の銅像に巻き付けている姿。
あれで逃げる気なんだ。