My important place【D.Gray-man】
第40章 パリの怪盗
「…ルパン?…なんでそんな所に立ってんの」
柵も何もない屋上だから、そのすぐ後ろは崖っぷち。
なんだってそんなギリギリの場所に立っているのか。
嫌な予感がする。
恐る恐る問いかければ、にぃっと見慣れた笑みをルパンは浮かべた。
「なんでって…とんずらする為?」
その一言で充分だった。
それが答え。
ルパンが狙ってたのは怪盗Gじゃない。
あの国宝の王冠だったんだ。
「なんで…」
「言うだろ? 敵を欺くには先ず味方からってよ」
…あの怪盗Gの予告状を送ったのは、ルパンだったんだ。
道理で子供染みてない計画的な行動。
怪盗Gが国宝を盗みやすいよう図ったのか。
「がきんちょ思考の怪盗Gなら、偽者の予告状にだって乗ってくれるとは思ってたけどよ。ここまで上手くいくとはな」
「…最初から私達も騙す気だったんだ」
笑みを浮かべたままのルパンと次元を睨み付ける。
手を組むのは気乗りしないと言っていた次元とのやりとりは、全部茶番だったんだ。
どこからどこまで茶番だったのか。
まさか最初から全部?
手を組もうなんて誘ってきたのも、ここで利用する為?
大泥棒にせこいも何もないけど、騙された身として良い気はしない。
「そう怖い顔すんなって。元々怪盗Gは捕まえる気でいた。そんな奴に"ルパン"の名を肩書きに使われちゃあ堪んねぇからな」
落ち着けと制すかのように、軽く両手を挙げて変わらぬ口調で話しかけてくる。
「だから雪と組んでる間は、ちゃーんとそのつもりで動いてたぜ」
「……」
…確かに、ルパンの的確な読みのお陰で此処で怪盗Gを追い詰められてるのも事実。
ルパンがいなかったら、ゴズが怪盗Gの容疑者として捕まっているかもわからなかったかもしれない。
そう思えば、あんまり否定もできないかも──
「だから怪盗Gは雪にやるよ。オレ様はこっちのお宝ちゃんとお先にオサラバすんな~♪」
ってちょっと待って。
にひっと笑ってスリスリと王冠に頬擦りするルパン。
結局、一番の目的はその国宝だったってことじゃない!