My important place【D.Gray-man】
第40章 パリの怪盗
「うっひゃあ、痛そぉ~…」
「おいおい…仲間相手に少しも手加減ねぇな」
仲間だから手加減してないんですっ
思いっきり傍観者となってるルパン達に、ふらつく怪盗Gの手から奪い取った王冠を放る。
「これ持ってて!」
「おぉっとっとぉ! あっぶねぇ…! 投げる前に一声かけてくれっかな雪ちゃん!」
大泥棒さんなら取り落とすこともしないでしょ。
案の定放った王冠をキャッチしたルパンを目の端で確認して、再び目の前の巨体に向き直った。
顎に重い一打を喰らって、ぐわんぐわんと視界を揺らしてる怪盗Gに。
「これ以上バズの体を好き勝手するなら、もっと痛め付けるけど」
「ッ…ちくしょ…もしかして、あんたがあの予告状送った犯人かよ…っ!?」
「は?」
予告状を送った犯人?
一体なんのことかわからないけど、ふらつく体をなんとか立たせて悪態つく姿は、先程までの話し方とまるで違う。
これが怪盗Gの素?
「何、予告状って」
「とぼけんなよ…ッオレのフリして予告状を送り付けただろ…!」
怪盗Gのフリ?
「オレをここに呼び付けて捕まえるつもりだったんだな…ッ」
「意味わかんないんだけど…」
捕まえる気ではいたけど、そんな小細工なんてしていない。
でも目の前の怪盗Gから感じる気迫は、嘘をついてるようには思えない。
どういうこと?
他に黒幕がいるってこと?
「だから…とぼけんなって!」
「っ! だから知らないってば!」
ぶんっと大きく呻るバズの拳。
怒りで頭に血が上っているのか、単純な攻撃は避けやすい。
斜めに体を逸らして、紙一重でその攻撃を避ける。
「私は予告状なんて送ってない! 怪盗Gを捕まえる気ではいたけど…ッ」
「じゃあ他に誰がやったってんだよ! オレのフリしてお宝盗もうなんて、セコイ真似しやがって…!」
怪盗Gのフリをしてお宝を盗む?
でもそれなら、怪盗Gより前に王冠を盗むか、怪盗Gが王冠を盗んだ際に横取りするかしに来るはず──
「!」
そう考えを巡らせた時に、今王冠は誰の手にあるのか。
はっとした。
思わず振り返る。
視界に映ったのは、王冠を手に屋上の端ギリギリに立つ赤いスーツ姿の彼。
…まさか。