My important place【D.Gray-man】
第40章 パリの怪盗
「捕まえられればいいけど…」
「なぁに。怪盗Gの強みと弱みはコインの表裏みてぇなもんだ」
「表裏?」
「とっかえひっかえ他人の体を使い回して、自分を"守ろう"としない。そういう保守的じゃない奴ぁ手強いが隙も多い。そういうこった」
不安を口に出せば、そんな不安は全くないのか。水タンクから飛び降りながら、軽い口調で返される。
ルパンの言うことは、なんとなくわかる気がするけど…けど………と、いうか。
「……はぁ」
「なーに溜息ついてんの?」
「…ううん」
フランス料理…結局食べられなかったな…。
怪盗Gの聞き込みと本部への連絡と書類作成と…って仕事してたら、あっという間に三日間は過ぎ去っていた。
別にアレン程食に執着はしてないけどさ…折角本場の地に来たんだから、美味しいフランス料理食べたかったなぁ…。
「ルパンって…思ってたより普通なんだね」
そういえばこの三日間一緒にいたルパンも、質素なものばっかり食べてたっけ。
色んな国で、簡単には盗めないような凄いお宝ばかり盗んでる怪盗なのに。
ここ三日間で一緒にいて感じたルパンは"普通"そのもの。
「もっと贅沢三昧な暮らししてるのかと思ったのに」
「オレをなんだと思ってんの? 雪ちゃん」
「狙った獲物は逃さない、神出鬼没の大泥棒」
「大当たり」
顔を覗き込んでくるルパンを見返して即答すれば、にんまりともう見慣れた顔で笑われた。
「オレは"贅沢"するより"退屈"しないでいられる人生の方が良いもんでね」
「…ルパンにとっての退屈って?」
ふと疑問に思って問えば、ルパンは更にその独特の笑みを深めた。
「スリルのない人生」
ああ…なんか、らしい。
『ヴー!!!』
「「!」」
ルパンらしい答えに納得していると、唐突に大きな警報が鳴り響いた。
一斉にルーブル美術館を照らしていた沢山の照明が動き始める。
もしかして。
「怪盗Gだー!!!」
警察か観客か。誰ともわからないその声が、予想していた怪盗の名を高々と告げた。