My important place【D.Gray-man】
第40章 パリの怪盗
三日後。
「…さむ」
ちらほらと舞う粉雪の中。
警察の目を掻い潜り、私達はルーブル美術館の屋上にこっそりと身を潜めていた。
ぶるりと体を震わせて、儚く舞い踊る粉雪にげんなりと目を向ける。
ただでさえ寒いパリの夜。
雪なんて降れば更に気温は下がるし、視界も悪くなって任務遂行の邪魔になる。
綺麗なものであっても、時と場合による。
邪魔な時は邪魔だ。
「ギャラリーも凄いなぁ…」
暗い夜空を見上げていた目を、上から下に移す。
高い屋上から見下ろす美術館前。
其処に広がっているのは、一目怪盗Gを見ようと見物に押し掛けている沢山の人々。
そしてそんな観客を美術館に近付けまいと、沢山の警察が取り締まっていた。
怪盗Gの捕獲をしなきゃならないのに、観客の取り締まりにも手間取られてる。
大変だろうなぁ、警察の人達。
「……もしかしてこれが狙い?」
ふと思う。
今回の狙いは、あの国宝。
それだけに守りも相当厳重なはず。
少しでも警察の手を減らす為に、わざと新聞の記事に盗みを載せたのだとしたら……ルパンが言うような子供な頭じゃない。
計画的に動いてる気がする。
本当に、怪盗Gはルパンが言うような人物像なのかな?
「……」
「雪」
じっと観客を見下ろして考え込んでいると、屋上に設置された水タンクの上に腰掛けていたルパンに呼ばれた。
「そろそろ時間だぜ」
トントンと腕時計を指差す動作に、はっとして時間を確かめる。
そろそろ犯行予告の時刻だ。
「でも、本当にこっちに逃げてくるかな…」
「下にはわんさか観客と警察がいる。いくら他人をコントロールできるからって、あの群集を掻い潜るのは手間暇かかんだろうよ。オレだったら遠慮してぇな」
盗みのプロがそう言うなら、信憑性はあるけど…。
ルパンと私。
次元とジジさんとバズ。
二手に分かれて逃げ道を塞ぐように待機してるけど、この屋上に怪盗Gは現れてくれるのか。
ゴズの為にも、絶対に捕まえないと。
そう思えば思う程、不安は拭えない。