My important place【D.Gray-man】
第40章 パリの怪盗
国宝"リージェント"。
"ピジョン・ブラッド"よりも遥かに値の張る一級品。
というか途方もない額だと思う。
なんたって"国宝"なんだから。
「こんなの盗んだら、パリどころかフランス国家敵に回すんじゃ…」
「そーだろうなぁ」
いや、そんな軽く笑いながら言うことじゃないって。
王冠の真ん中で一層大きく輝くダイヤは既に、あの盗まれた"ピジョン・ブラッド"より大きい。
「本当にこんなの盗むの? いくら高級品だからって、抱えるリスクが高過ぎるよ」
「怪盗Gの頭はただのがきんちょだ。何がどうヤバいかなんて考えてもいねぇさ」
「でもだからって…」
流石にこれは…。
もう一度、じっと国宝を見る。
確かに見た目だけで相当な額なのはわかるから、リスクを無視するなら盗みに来そうなものだけど…。
でも国宝だよ?
有名過ぎるから、闇市に売り付けるにしろ足がつきそうだけど。
「何故か怪盗Gはこのパリにしか出没しない。パリでの宝石は粗方盗んでんだ。残すところ、わっかり易いお宝はこんくれぇのもんだしな」
私は一度しか怪盗Gを見てないから、よくわからないけど…そんなに子供なのかな…。
「ねぇ」
「ん?」
「怪盗Gが子供だって思う理由は?」
そう、不思議に思ってルパンに問いかけた時だった。
「っ」
どんっと、私の体に誰かがぶつかったのは。
「あ、ごめんなさいっ」
慌ててぶつかる固い感触に振り返る。
だけど同じ目線に人はいなかった。
見えたのは、もう少し下。
「…あ」
私より目線が下にある、背丈がブックマン程の少年が其処に立っていた。
頭にラビみたいにバンダナのようなものを巻いていて、驚いた顔で見上げている。
「ごめんね。痛くなかった?」
「ぇ…あ…いや…」
少し身を屈めて、目線を合わせてみる。
バンダナで少し見え難いけど、ちょっとツリ目の幼い顔。
緑がかった暗い髪は、頭部はツンツン跳ねて短いのに襟足だけ長く二つに結んでいた。
でも顔や服装からして男の子。
年齢は9、10歳くらいかなぁ…面白い髪型の少年だな。