My important place【D.Gray-man】
第40章 パリの怪盗
コツコツと、大理石を歩く靴の音が響く。
有名な大泥棒なのに、顔を隠すことを一切しないルパンは堂々と真っ赤なスーツ姿でその床を踏みしめていた。
「ねぇ…大丈夫なの?」
「ん~?」
思わず不安になって、隣をついて歩きながら辺りを伺う。
警備員がこっちを見ていないか、ついその視線が気になってしまう。
最早これじゃ私が泥棒の気分。
「なーに、オレ様の心配してくれてる? やっさしいねぇ雪ちゃん」
「…違います。怪盗Gを捕まえる前にこっちが捕まったら元も子もないでしょ」
にしし、と歯を見せて笑ってくるルパンをジト目で返せば「つれない」と残念そうに返される。
でもその目は全く悲しんでなんかいない。
全部茶番だ、私に馴れ馴れしいこの人の態度は。
「こういうもんはコソコソしてっ方が怪しく映るんだよ。堂々としてりゃあ平気なもんさ」
そういうものなの?
でも確かに、入場ゲートを潜る時も警備員の横を通り過ぎる時も、表情や仕草、その雰囲気すら"普通"であるルパンに目を止める者は誰もいなかった。
自然過ぎて誰も気付いていないんだろう。
「それより雪、お勉強の時間だぜ」
「え?」
「今までに怪盗Gが盗んだ盗品を挙げてみな」
「ぇ…えーっと…」
前を見据えたままコツコツと大理石の床を歩く。
そんなルパンの急な問いかけに、慌てて頭の中の情報を引っ張り出す。
確か…聞き込みで聞いた話だと…
「ホープ・ダイヤモンドと…ラ・ペレグリーナ…と、ゴールデン・トパーズ…と……と…その他、諸々」
……駄目だ3品しか思い出せなかった。
とにかく結構な品数、盗まれているらしい。
「雪ちゃん、勉強不足」
「ぅ」
「まぁ、合ってるっちゃあ合ってるか。正解正解」
「……なんか嬉しくない」
にまにま笑って頭撫でられても、褒められてる気がしないから。
「じゃあ次回は勉強してきなさーいよ」
「…はーい」
砕けた態度が多いから、そんなルパンといると自然と肩の力が抜ける。
力なく返事をすれば、じぃっと目を向けられていることに気付いた。
何?