My important place【D.Gray-man】
第40章 パリの怪盗
「ぅぅ…寒い…」
パリの夜は冷えるなぁ…。
季節は冬。
陽が落ちればすっかり息が白くなる気温に、ぶるりと体を震わす。
冬用のファインダーのマントはしっかり防寒性があるから、風邪をひくことはないだろうけど…でも寒いものは寒い。
『──こちらジジ。どうだ、そっちの様子は』
「こちらは特に異常なしです」
ジジさんに借りた通信ゴーレムから、本人の声が届く。
広い屋敷のこれまた広い庭に生える沢山の木々。
そのうちの一本の木の枝に腰を下ろしたまま、高い位置から見える屋敷の二階バルコニーに目を向ける。
見たところ異常はない。
まぁまだ犯行予告時間じゃないしね…。
ジジさんの犯罪行為…じゃなくお手柄のお陰で手に入れた情報。
ド・モンヴィル公爵という財ある人物が持つ、"ピジョン・ブラッド"というルビーの宝石。
それを頂きに参上するという怪盗Gの予告状。
"ピジョン・ブラッド"──通称、鳩の血。
そう命名されるルビーは、高値のもの限定らしい。
「…にしても、」
犯行時間を指定して、何を盗むかも伝えて。
こんなに自分に不利な状況で盗みに入るなんて…
「愉快犯だなぁ…」
絶対にその状況を楽しんでるとしか思えない。
それでいて成功率は100%なんだから。
怪盗ルパンの再来なんて謳われても仕方ないのかもしれない。
…サク…
「──!」
その時、広い屋敷の庭に薄く積もる雪を踏み締める音を耳にした。
私がいる場所は厳重に警察が警備している屋敷周りからは、少し離れてる。
ジジさん達も散らばって監視しているから、近くに人はいないはず。
となるとこの足音は知らない他人のもの?
咄嗟に通信ゴーレムの電源を切る。
見つからないよう木の葉の中でじっと息を潜めた。
もしかして………怪盗G?