My important place【D.Gray-man】
第40章 パリの怪盗
「オイ。こんな所で見物かよ?」
「今夜はその腕前を拝見しに来ただけだしな。此処で充~分」
サクサクと薄い雪の上を踏み締める足音の持ち主は、知らない男性二人組だった。
夜の庭を点々と照らす照明では、薄らとしか姿は見えない。
人相はわからないな…。
見物ってことは、怪盗G本人ではないらしい。
でも余所の警察署の人間や、もしかしたら怪盗Gの仲間だって可能性もある。
「ぶぇっくしょい! うう~さみィさみィ! 冷えるなぁ冬のパリは」
「そんな薄着でいるからだろーが。風邪引いても俺ァ知らねーからな」
「そういうオメェだって薄着だろーよ」
「こりゃ俺の一張羅だ」
砕けた様子で話しているところ、顔見知り程度の仲ではないらしい。
木の葉の隙間から、目を凝らしてみる。
なんとなく細身な男性なのはシルエットでわかるけど…やっぱり人相まではわからない。
声をしっかり記憶しておこう。
重要な手掛かりになるかも──
ガシャアンッ!
「!」
その時、屋敷から硝子が割れるような音が響いた。
一気にその場にいた二人組の周りも含めて空気が緊張する。
「で、出たーッ! 怪盗Gだー!!!」
屋敷から木霊する警察の声。
やば、謎の二人組を観察してる間に予告時間になっちゃったんだ…!
「ひっ捕らえろ! 絶対逃がすな!!」
聞いた声。
これはガルマー警部の声だ。
一気に懐中電灯の光が右往左往する中、暗い夜空に屋敷から飛び出す謎の人影を見た。
「…何あれ」
人影というか、コスプレ影。
白と緑のツナギ状のピエロのような服。
その胸には大きく"G"と書かれたロゴマーク。
頭にも大きな被り物をしていて、真ん中にはこれまたピエロのようにふざけた一つ目の模様だけ。
総合しておかしな一つ目コスプレ人形。
「はっはっはー! 予告通りこの"ピジョン・ブラッド"は頂いていきますよ、警部殿!」
一つ目コスプレから発せられる愉快そうな声。
恐らくルビーが入ってるであろう、小さな金庫を脇に抱えて、群がる警察に慌てる素振りは一切見せていない。
コスプレで中の人は全くわからないけど、結構大柄だ。
あれが怪盗G?