My important place【D.Gray-man】
第39章 夢現Ⅲ
「雪」
「……」
「どうした」
じっとりと両手に冷や汗が浮かぶ。
それを悟られないように、ぎゅっと握り締めた。
ゆっくりと顔を上げて、ユウを見る。
私を見て怪訝そうにはしてるけど、驚いたりはしていない。
きっと私の見た目はいつものもの。
…ノア化は、していない。
「…なんでもない」
周りに構えず叫んだ気がするけど、あれはユウには届かなかったんだ。
…でもなんで治まったんだろう。
あんなに激しい痛みを伴っていたのに。
ただ一時的に発症しただけ?
「……」
全然わからない。
考えると頭の隅に何かが引っ掛かるようで、でも漠然としたまま。答えは掴めない。
「…なんだよ。怖い夢でも見たのか」
黙り込んだまま、考え込んでしまった私は不安な顔でもしていたのか。ベッドに腰掛けたユウが再度尋ねてくる。
「夢…?」
…そういえば。
何か、夢を見たような気がする。
誰かに不思議な言葉をかけられた。
それは私の心を冷たくして、でも温かくしてくれた。
あれは…あの人達は、誰だったっけ…。
「……」
あの人"達"…?
何かを思い出せそうで思い出せない。
一歩手前で引っ掛かってるような感覚。
なんだろう。
「おい、雪」
「…ぁ。え、何」
少し強めに呼ばれてはっとする。
目を瞬けば、眉間に皺寄せて見てくるユウと目が合った。
「何意識飛ばしてんだ。ちゃんとこっち向いてろ」
「…うん。ごめん」
素直に謝れば、その眉間の皺は少し消えたけど完全には取れなかった。
何か納得いかないような顔で、睨み付けられる。
ええと…なんでしょう…。
「…お前…」
「何?」
じーっと、半ば睨むように見てくるユウの真っ黒な目。
もう見慣れたけど、だからって堂々と睨み返せ…いや見返せたりしないから。
居心地悪く、とりあえずヘラッと笑ってみれば。
「…はぁ」
溜息をつかれた。
何故。