第1章 「こっち向いて、君」
「店長事故に遭わないかなああああ!!!!!」
「お前そういう事は俺のいないところで小声で言いなさいよ」
結局マッサージをさせられたあと、コンビニで自分と斗真の分の昼食を買わされに行くはめになった。
帰ってくると、斗真は「お腹すいたー」と早速袋をがさがさ漁り始める。
「じゃあ、これお金」
「はいはい。今お釣り渡しますから」
「いいよ。の分も奢ってあげる」
「……なにを企んでるんですか?」
「企んでねぇよ。親切心を無駄にするんじゃないよ」
意外にもこんな風に優しい一面も見せてくるのが、この男の食えないところだ。
は斗真と二人で昼食の時間となる。
斗真がしきりに話しかけてくるのを適当にあしらうと、斗真は拗ねての頬をつつき始めた。
「おい、俺の話はきちんと聞きなさい」
「だってさっきから自分の話ばっかりじゃないですか」
「俺の事知りたいだろ?」
「私の事は?」
「別に知りたくない」
「でしょうな」
休憩時間も終わり、仕事に戻る。
交代で休憩に入った俊介が、なんだか複雑そうな表情で戻ってきたので、どうしたのかと尋ねてみると、
「いや、店長に変な事言われた…」
と返ってきた。
「なんですか?変な事って」
「あー…いや、気にしないで」
俊介は明らかにごまかしている様子だったが、深く詮索するのも悪いと思い、仕事に集中する事にした。
DVDの返却に出た時、斗真に呼び止められる。
「ねー。俺の仕事手伝ってー」
「嫌ですよ。返却溜まってるんですから」
「まーまー、いいからいいから。手伝え」
「…はぁ。なんですか?」
「ホラー映像のコーナーを…なんで離れるの」
「私がホラー苦手なの知ってますよね」
そう、はホラーが苦手なのだ。よって、返却に行く時もコーナー展開する時も、基本的にホラーコーナーに近付く事は避けている。
斗真はそれを聞くと、にっこりと可愛く笑った。
「うん、知ってる。だから頼んでるの」
「本っっっ当に性格悪いですよね!風間さんに頼んでください!」
「これもホラーを克服するチャンスだよ」
「いーやーでーす!お風呂入れなくなるんです!」
「一緒に入ってあげるけど」
「結構ですけど」
そんな会話の後、は俊介に斗真の仕事を手伝ってもらうよう頼み込んだのだった。