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こっち向いて、君。

第1章 「こっち向いて、君」


「店長!!」

は怒声を発した。

「なぁにー?」

怒声を浴びせられた張本人は涼しい顔でパソコンと向かい合っている。

「なんでシフトの休み希望通ってないんですかー!」
「それはね?」

店長が急に真顔になるので、は押し黙ってしまう。

「お前は働きアリだからだよ」
「ぶち殺しますよ?」

店長の名は生田斗真。一年前にがこのレンタルショップでバイトを始めてからの仲だ。
元々人見知りをしない、物事をはっきり言うは職場の人間ともすぐに打ち解け、楽しく働いている。しかし、この斗真に関しては、どうも態度が気に食わない。
同じ職場のバイトメンバーには優しいのに、何故かにだけ妙に意地悪なのだ。

「はあ…せっかくの合コンだったのにー…」
「あのなぁ、合コンなんて残り物のロクでもない連中しか来ないの」
「店長彼女は?」
「…いませんけど」

残り物じゃねぇか。と思っただが、そろそろ仕事開始の時間なのでその言葉を飲み込み、自分の持ち場に向かった。

「おはようございまーす」
「おはよう。どうしたの?やたらお怒りのご様子だけど」

彼は先輩の風間俊介。新人として入ったときから世話になっている。

「また店長にやられましたよもう」
「あはは、店長はに厳しいからねぇ」
「私なにか気に障る事でもしたんでしょうかね?」
「いや、可愛いから意地悪したくなるんじゃない?」
「可愛いって…そんな事ないですよ」

俊介の笑顔と発言についドキッとしてしまう。
実のところ、は俊介が少し気になっていたりするのだ。

そうして、仕事は忙しくも順調に進み、休憩時間になる。

「あー、なんか肩痛いー」
「揉んでやろうか?」
「店長まじすか。お願いしまーす!」

斗真が後ろに立つ。肩を揉んでくれるのは気持ちがいいが、急に耳に息を吹きかけられたので、つい反応してしまう。

「なんですか!?」
「別に?息しただけ。はい次俺のばーん」
「は!?」
「俺の肩も揉んでよ。別のところでもいいけど」
「店長、それはセクハラというんですよ」
「あ、そだ。俺の飯も買ってきてー」
「はぁ!?自分で行ってくださいよ!」
「やだ。めんどい。行け」

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