虹彩異色症の女神さんは2人の炎に愛されました【エース・サボ】
第5章 #気づいたら・・・
「んなっ!」
『下心が丸見えよ』
「ねェよ!馬鹿!!」
『嘘』
まるで心を見透かされたような感覚に、エースは身震いした。
アリスはかなり大胆なことを口にしたくせに平然としてやがる。
俺だってせっかく煩悩との戦いに苦戦してんだっつーのに・・・。
んなこと言ったら俺は・・・。
『私はあなたのものなのよ?』
「は?」
『あなたが私を買った時点でね』
「あぁ、そういうな」
『あなたが私をどうしようと勝手なのよ?』
あれ?
なんでだよ・・・。
俺はそんなこと本気で望んでないぞ。
湧き上がってくるのは怒りか?
そんな風に自分を大切にしないアリスへの怒り。
相手が求めたら身体を差し出すなんて・・・。
フザけんじゃねェよ。
「フザけんな、俺を馬鹿にしてんのか?」
『え・・・』
「俺はお前の身体がほしいわけじゃねェ」
『・・・』
「お前はっ!俺を何だと思ってる!!?」
『・・・』
顔を顰めるアリス。
まさかそんな答えが返ってくるとは思わなかった。
男は欲望まみれだと思ってた。
でも、エースは違った。
エースは私を怒ってる。
そんなことするなって拒んでる。
嗚呼、そうか。
優しいから・・・。
エースは優しいから私を怒ってるんだ。
エースを怖いと思う感情は、アリスには浮かんでこなかった。
寧ろ怒ってくれるエースを嬉しいと思ってしまう。
『ごめん・・・』
「俺だって、お前を大切にしたいんだ」
口調を和らげてエースは言った。
「俺は確かにお前が好きだ、でもお前がそんなこと心配する必要は無い」
『私・・・拒まないから』
「分かったから、これ以上俺を煽るな」
『煽ってなんかないわ』
「俺には煽ってるようにしか感じないんだっ!」
エースはアリスの頭をポンポンと撫でた。
アリスは照れたように顔を伏せた。
「何今更照れてんだ?」
『ちがっ、これはっ!!』
「女らしい反応だな」
『そ、そう?』
エースは笑って言った。
アリスも笑った。
2人の想いは通じたのかもしれない。
だが、アリスは気づけなかった・・・。
エースの異変に・・・。