第1章 初夜
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「・・・元はと言えば私がいけないのだ。
人間の傲慢さを理解していなかった・・・」
「そんな・・・」
犬神は苦しそうな顔をして、視線を畳みへと落とす
はそんな犬神を見ては居たたまれなくなる
「・・・犬神様・・・」
遠慮がちに犬神のすらっとした手の拳に手をそっとのせる
ビクリと犬神は躰を揺らす
「・・・犬神様?」
「・・・・っ、私・・が怖くない、のか?」
「なぜ?貴方様は犬神様は私の命の恩人ではありませんか・・・全然怖くないですよ」
にこりとは犬神の目をしっかりと見て微笑む
「・・・名は?名はなんと言う?」
「と申します。助けていただいてありがとうございました」
はもう一度犬神に頭を下げる
「・・・良い名前、だ・・・
その・・・」
「なんですか?」
「私も・・・に触れても・・・いいだろうか?」
「もちろん。私はそう簡単には壊れませんよ?」
割れ物を扱うように犬神はそっとの頬を撫でる
「ふふ、犬神様の手は温かいです」
頬に当てられた手をはその上にそっと重ねる
「・・・お前は変わっているな・・・
今までの生贄たちは私を恐れおののき、震えていた」
犬神はを見つめ、悲しそうな顔をしていた
「犬神様・・・」
「お前まで・・・そんな顔をするな・・・
物の怪を恐れおののく事は普通の事だ。
実際、そうやって我々は人間との関係を保ってきたのだ」
「じゃあ私も犬神様を恐れたほうがいいのでしょうか?」
は茶目っ気たっぷりの顔で犬神を伺う
「くははっ・・・いや、はそのままで・・・いてくれたら・・・その・・・」
犬神が言いにくそうにから視線を反らす
「犬神様?」
「・・・なんでもない」
ぽんぽんとの頭を優しく撫でる
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