第1章 初夜
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「・・・ここ?」
が目を開けると、見知らぬ場所に寝かされていた。
「・・・起きたか?」
声のした方へと振り返ると大柄の男が静かないでだちで盆を持ってやって来た
「・・・あなたは・・・」
「・・・私は・・・」
が男を上から下までゆっくりと見る
「え・・・まさか・・・犬神、様とか?」
「・・・・・」
「違います、よね・・だって人間の姿をしているし・・・」
「いや・・・私が犬神だ」
「へ?!」
犬神は深いため息をつきながらの傍らへと座る
「お前を怖がらせてはいけないと人間の形をしてやっている」
「・・・っ」
「別に怖がることはない。
あとで抜け道を教えてやるからしばらくしたらこの村を出て行くといい。そして二度と戻るな」
少し悲しそうな顔をして犬神はぶっきらぼうに告げ白湯と薬を差し出す
「これ・・・は?」
「眠り薬を盛られたのだろう。
ここへやって来る女たちはみなそうだ。
この薬を飲むと楽になる。
飲んだらしばらく休むといいだろう」
犬神は言うだけ言うとすっと立ち上がり、部屋を出ようとする
「あ、あの・・・」
「・・なんだ?」
めんどくさそうに犬神が振り返る
「助けてくださってありがとうございました」
は布団から起き上がり、三つ指をつき、深々と犬神に頭を下げる
その姿を見て犬神は驚いたような顔でを見つめた
「・・・別に。村の奴らが気に入らぬだけだ」
と目を合わせないよう、早口でそう答える
「それでも今までも助けてくれていたのでしょう?」
は犬神ににこりと微笑む
犬神はコクリ、と喉を鳴らす
「人間の傲慢さに怒る事なく助けていてくれていたなんて感謝します」
「・・・」
犬神はぎょっとした顔でを見る
「・・・あの?」
「初めてだ」
「え?」
「礼を言われたのは初めてだ。」
犬神はの元へ座り直す