第2章 交わった躰
「犬神様」
数刻して戻ってきたのは烏天狗だった
「何かわかったか・・?」
「はっ。おそらくこれに書かれている伝承が参考になるのではないかと・・・」
烏天狗から渡された書物を開くと妖怪と人間との交わりについて書かれていた
「・・・これは・・・」
「はい・・・そこには人間と妖怪が交わった場合、妖怪は人間の精気を吸い尽くし、死ぬ・・・と」
「・・・・っ」
「しかしながらこの伝承の場合、犬神様とはいくつか条件が異なります」
「・・というと?」
「ここをお読みください。”人騙され妖怪と交わり愛無き交わり人を滅ぼす”」
「・・・どういう事だ?」
「つまりは愛無き交わりはお互いをいたわらぬ故、人を殺してしまうという事でしょう。妖怪にとって、本来人間は食べるものですから」
「・・・という事は」
「お互い愛し合っていれば交わった人も死なぬ・・・ということかもしれません・・」
「そうかっ!よしっ」
「お待ちください。実はよくない噂を耳にしたことがございます」
「なんだ?」
「人間が妖怪を取り込み、逆に妖怪の力を吸収した・・・という話です」
「吸収・・・だと?」
「・・・見たところ、様は行為の後、妖力を微力ながら感じました」
「・・・しかし」
「はい、それ以上に犬神様の妖力が増した・・・ただ一瞬の隙ができたのも事実です」
「・・・・」
「下手をすれば敵に付け込まれます」
「そうだな・・・」
「暫くは交わりを自重してください」
「・・・・」
「してください」
「・・・」
「しなさい!」
「わかった、わかった・・・の身にも何が降りかかるかわからない以上、無理はしない」
「ならばよろしい・・・」
「あとは化け狸の首無の報告を待とう」
「そうですな・・・」