第1章 君といたい
暫く話し込んでいると陽も傾き始め、僕達は暇を告げる事にした。
玄関先まで送り出してくれた土方さんが
「所用で出ている新八と原田が直に戻ると思うが
会わなくてもいいか?」
と、聞いて来る。
「うん。もう暗くなっちゃうし……。
それにまたいつでも会えるから。」
「そうか。…………そうだな。」
土方さんの瞳は何時に無く優しい光を湛えていて、そしてその視線を有希ちゃんに向けた。
「有希。」
土方さんに呼ばれた有希ちゃんが「はい」と返事をして可愛らしく小首を傾げる。
「………総司を頼む。」
そう言って浅く頭を下げた土方さんに有希ちゃんが慌てて駆け寄った。
「そんな事……止めて下さい、土方さん。」
「お前には…総司の為に苦労を掛けるな。」
「違いますよ、土方さん。苦労なんかじゃありません。
沖田さんと一緒に居るのは、私の為でもあるんですから。」
言いながら微笑む有希ちゃんを見て、土方さんも少し呆れたように笑った。
「全く……お前らには敵わねえな。」
お互いに笑い合う有希ちゃんと土方さんの姿を見て、僕は本当に幸せだと思った。
勿論、病に冒されている事はちゃんと自覚してる。
それでも、有希ちゃんがこうして僕の側に居てくれて、近藤さんや土方さんも僕の身体を労ってくれて……
何時か必ずこの場所に戻って来られると思えたんだ。