第4章 僕の風が今変わった
「それに……
俺の元に来て早々、俺がお前には到底敵わぬと
思い知らされる事態になってしまったからな。」
風間が何の事を言っているのか全く理解出来ず「……どういう事?」と問い掛けると、風間は突然すくと立ち上がった。
「それを今此処でお前に教えてやる程、俺はお人好しでは無い。
自分自身の目で確かめるが良い。
有希は此の先の平清という料亭に預けてある。
さっさと引き取りに行け。」
それでもまだ動けない僕を煽るように風間が続ける。
「今日の夕刻までにお前が迎えに行かねば、
天霧が有希を西国へ連れ帰るよう手筈を整えてある。
……これが最後の機会だ。」
そのまま部屋を出て行こうとする風間に、僕は慌てて声を掛けた。
「もう、蝦夷に向かうの?」
風間は振り返って僕を見下ろす。
「有希とは既に別れの挨拶は済ませてある。
お前とももう会う事は無いであろう。」
「……ありがとう。
君には本当に感謝してる。」
僕が精一杯の想いを伝えると
「ふん……お前に礼を言われるのは存外に気分が良いな。
その言葉への返礼として、お前の代わりに俺が土方達の……
新選組の最期を見届けて来てやろう。」
そう言って風間は静かに笑いながら行ってしまった。
風間が居なくなってまた一人になった僕はゆっくりと身支度を整えると、逸る気持ちを抑えながら部屋を出た。