第4章 僕の風が今変わった
「沖田さん、お客さんですよ。」
僕の世話をしてくれている松本先生のお弟子さんが声を掛けて来た。
客……?
今更僕に会いに来る人が居るなんて考えも付かない。
そんな事を思いながら眉をひそめていると、部屋に入って来たのは風間千景だった。
「……どうして?」
僕が驚いた顔を隠しもせず問い掛けると
「ふん。まだ生きていたとはな……。」
風間は不敵に笑って言った。
でもその深紅の瞳には僅かに安堵の色が浮かんでいる。
「旧幕府軍が……
土方達が蝦夷に入った事は知っているか?」
「………うん。」
風間から唐突に切り出された話に、僕は戸惑いながらも頷いた。
「蝦夷地を覆い守っていた豪雪も間も無く溶け始める。
それに乗じて新政府軍も蝦夷に入り、
一気に攻め込むようだ。」
僕は何も言えずに只、風間の顔を見つめる事しか出来なかった。
「俺も……新政府軍に同行し、蝦夷に入る。」
「まだ……戦うの?」
僕がそう問うと風間の顔が少しだけ和らいだ。
「いや、既に薩摩に義理立てする筋も無い。
俺はもうどちらにも与するつもりは無いが、
恐らく函館が最終決戦の地になるだろう。
それを見届けたいのだ。」
風間の言っている事が僕には痛いほど理解出来た。
この動乱の中に身を置いた者にとっては、その結末を自分の目で確かめたいと思うのは当然だ。
僕だってこんな身体じゃ無かったら、今直ぐにでも土方さん達の元へ飛んで行きたい。