第3章 君の名を呼んだ
二月程すると有希ちゃんは日常生活に支障が無いまでに回復し、漸く松本先生の許可を貰って明日には有希ちゃんを迎えに行く事にした。
でも、有希ちゃんを迎えに行くのは…………
僕では無く、風間千景だ。
屯所に戻ったあの夜、僕は土方さんに頼み事をした。
風間千景に連絡を取って欲しい…と。
そしてこれから先、風間に有希ちゃんを引き取って貰いたい…と。
最初は土方さんも驚いていたけど、僕の想いを告げると今度は怒ったような顔をして僕に問い掛けた。
「本当にそれで良いんだな……総司?」
「うん。」
多くを語らなかったけれど、それでも僕の血を吐くような想いで決めた覚悟を土方さんは悟ってくれたようで、一つ大きな溜め息を吐いてから
「………分かった。
お前はもう何も心配するな。」
と、優しい声色で言った。
その後、土方さんがどういう風に話を着けたのか分からないけど、風間は僕の願いを聞き入れてくれたらしい。
有希ちゃんを迎えに来て、風間の元で大切に守ってやると約束してくれたと土方さんから聞かさせた。
既にこの近くに逗留している風間が明日有希ちゃんを迎えに行って、そのまま西国へ連れ帰ってくれる筈だ。
……有希ちゃんは僕を恨むかな?
……僕の事を嫌いになるかな?
それならそれで構わないと思った。
僕の事なんか忘れて、風間と幸せに暮らしてくれれば良い。
有希ちゃんがそうしてくれれば……
僕のこの身体を引き千切られるような辛さなんて
大した事じゃ無いんだよ。