第10章 半径
新生活が始まり、初回授業の日。
『家出た?』
それはやはり彼からだった。
「出たよ」
『俺もうすぐで駅着く。』
「え、私も」
私たちは地元の高校に通っていたため、最寄駅が一緒だった。
『そっか』
そっか。で終わらせるなんてずるい。駅に着くタイミングが一緒なんて、一緒に学校まで行きたくなるじゃん。
「一緒に行こうよ」
私、なに言ってんだろ、あれだけ関わらないようにしてた彼に自分から関わりに行ってるじゃないか。
『いいよ!』
そうやって喜んでるみたいな反応もずるい。
きゅんとしちゃうのはなんでだ。
神様助けてください、私は篠田のことが嫌いです!関わりたくないんです!
彼と駅で合流し、40分間電車に揺られる。
なかなか長い道のりだ。
ガタン
電車が大きく揺れた拍子に彼の方に体が傾いてしまった。
『あぶね』
彼は咄嗟に私の体を支えた。
この距離およそ半径1m……!
「あっ、ご、ごめん」
『胸キュンした?笑』
「ばっ、ばか、なに言ってんのするわけないでしょ!」
嘘です。
しました。
『照れてる』
「うるさい!照れてない!」
こんな登校、いやだああああああああ