第3章 合宿
季節はあっという間に流れ、今日から3日間、コンクール前の強化合宿。
「咲羅先輩!」
「ん?」
ああ、振り向く姿も素敵だ。
俺は3秒間見とれた。
「…どうした?」
「あっ!あの、ここのサックスとパーカッションが合わせておかないといけないところ、明日の練習の前に俺達でイメージ統一しておきませんか?」
パーカッションパートには先輩がいなかった。一番経験が長い俺が入ってすぐにパートリーダーになった。それはそれでこのようにして先輩と話す機会が増えて嬉しかったが。
「おっ、いいじゃん、やる気あるねえ。それなら今日中にやっちゃいたいね。空いてる時間は…………夜しかないか、夜はさすがに休みたいよね?」
いや、それは嬉しいです、先輩。
「全然大丈夫ですよ、先輩こそ大丈夫ですか?」
「あー、私夜弱い………笑いや、でも大丈夫!じゃあ、私がお風呂あがったらでいいかな、場所どうしよう…」
「先輩の部屋、他の先輩いますよね、先輩方の部屋に行くのはちょっと…で俺一人部屋だから、どうですか?」
うわっ、俺、なにさらっと恥ずかしいこと言ってんだ。
「あ、そっかそっか、じゃあそうしよう!」
え、先輩気にしてない…?
(さすがに無防備すぎでしょ高校生にもなって。)
無防備すぎて逆に俺が心配になってきた。
俺がなにもしなければいい話だが。
(なにもしなければ……ね。)
「では、夜に。」