第10章 緑間視点
入院後、一度も顔を見せることなく板井野は卒業した。
見舞いは断られたというので、見つからないように何度か足を運びはした。
女をあんな目に合わせたということは、少なからず動揺していた。
だから顔の包帯が外され、かつての澄ました顔を取り戻した板井野を見たときは、ほっとした。
顔にキズが残ってしまったら、どう責任を取っていいのか分からない。
全中が終わってからも、俺は部活に顔を出していた。
進んだ秀徳で俺は完全なバスケをしようと誓った。
それは他のメンバーも同じだったのかもしれない。
初めは、レギュラー全員同じ学校に進学しようかという話も出ていた。
が、お互いをライバルとして高めあう方がより高みを目指せるという理由で別々の進路となった。
黒子だけは、誰かと同じ学校を選ぶのかと思ったが、本人の希望で黒子も1人進学した。
奴の進路は人事を尽くしていないように思えた。
誠凜など、確かに無冠の五将の1人が入ったようだが、所詮は名の知れぬ新設校。
結果としてそれは誤りではあったが。
板井野の進路はあえて耳に入れないようにしていた。
卒業式にも顔を見せなかった以上、入試が間に合ったかも定かではない。
人の将来に傷を付けてしまったようで恐ろしかった。
だが、いつか試合を見せたいとも思っていた。
完全なバスケを、高校でやれれば、板井野の顔を正面から見る事ができると思っていた。