第10章 緑間視点
赤司に言われたからという訳ではないが、俺は人事を尽くしてきた。
それは結果として現れていた。
青峰だけでなく、他のレギュラーも才能を開花させていった。
それが、板井野を不幸にするとは思わなかった。
最後の全中。
俺たちは、問題なく3連覇を達成した。
だがもっと、完璧な形で勝負を付けていれば、あんなことにはならなかった。
そうだ。
バスケはチームスポーツ。
圧倒的な成長をみせていた俺たちは、本質を忘れていた。
だからこそ、あんな事に。
決勝戦は結果的に相手チームを玩ぶ物だった。
最後だからと一応のチームワークは見せようとしたが、今ま試合中でも競いあってきたのだ。
ちぐはぐした歪な試合運びだと映っただろう。
中継役の黒子が出ていれば少しはマシになっただろうか?
今ではそれも分からない。
だが、あれよりは酷くならなかっただろうなと思う。
奴はパスに関して言えば俺たちよりも上だ。
パスを出した決勝戦ではミスが出た、その以外の試合は言うまでもなく完璧なバスケとは程遠い。
それが原因だったのだろう。
他校の選手が板井野を襲った。
標的にされた理由は、なんだったのか。
青峰の恋人であったからだろうか。
現に青峰が一番取り乱しているように見えた。
あんな時でさえ、赤司は冷静だったと記憶している。
酷い有様だった。
いつも澄ました顔をしていた、板井野はどこにもいなかった。
今でも、思い出すと震える。