第10章 緑間視点
俺は板井野を嫌悪していたが、赤司はそうでも無かった。
というのも、板井野はバスケ部のためによくやってくれていると、言うのだ。
どこがだ、と俺が返したのは言うまでもない。
板井野がバスケ部を見に来たことはない。
少なくとも、あれくらい派手な女は帝光では珍しい。
いたとすれば気づくだろう。
断言できる、アイツはバスケ部の見学には来た事が無い。
あいつはバスケには興味が無いだろう。
俺は赤司に言った。
そういうわけではないと、赤司は返す。
なんでも板井野が灰崎と付き合いだしてから、灰崎は暴力沙汰は起こしていないと。
言われてみれば、最近の灰崎は暴力沙汰は起こしていないように思う。
とはいえ、練習に参加するかどうかは別だが。
恋愛に現を抜かしているからではないかと、赤司に問えば、板井野をよく見てみろといわれた。
いったい見て何が分かるという。
だが、赤司に言われたとおりにした。
赤司は当時から人を従えることに慣れていた。
それに赤司より洞察眼が劣るつもりはない。
板井野を観察してしばらく。
俺はどこかぎこちない動きをすることを知った。
腕を上げるのをためらったり、不自然に聞き手ではない方を使うなど。
見ているとおかしな行動をしていた。
どこか耐えるような顔をしている事も気になった。
その理由が何であるのかは、俺には理解できなかった。
全てを理解したのは夏の事だった。