第10章 緑間視点
相手方のベンチに座る黒髪の女。
制服をきちんと着こなし、姿勢よく座る姿は普段であれば好感が持てるはず。
だが、あそこにいる板井野好代は俺にとってずっと気に食わん女だ。
俺が板井野を知ったのは中学の入学式よりも前。
赤司から新入生代表に選ばれたと聞いた時だった。
赤司が選ばれたのは妥当だと思った。
いつか勝つが、当時から赤司は俺より出来のいい子供だった。
だから、同点でもうひとり新入生代表をする子がいるという事を聞いて、驚いた。
赤司と並ぶという事は、満点かそれに近い得点を出したという事だ。
一体どんな奴なのだと、少し興味を持った。
初めて見たとき、ああ成るほどと納得したのを覚えている。
新入生代表という、少なからず緊張するであろう場面で赤司と同じように涼しげな顔で、さらりと成し遂げてた姿を見たときは。
初めの印象がよかっただけに、その後の変貌にはがっかりした。
灰崎と付き合い始めたという噂が流れたあたりだろうか。
髪を脱色し、濃い化粧で登校してきた板井野はとてもあの新入生代表をした女には見えなかった。
それでも成績は落とさなかったのはさすが、という所だろうか。
あんな恋愛に現を抜かしている女に負けるというのは屈辱的だった。
いくら相手が帰宅部で、俺とは違い暇であるとしてもだ。
なぜあんなチャラチャラした奴に負けなくてはならないのだよ。
あの頃から板井野の事が気に食わん存在となっていた。